■ 勝田層群産のPanopea nomurae KAMADA の形態
殻は大型で長方形を呈し、殻頂は突出せず、かすかに前方に位置し、内側へ曲がりこむ、楯面は殻頂のまきこみによって溝状になり靭帯は外在する。 小月面はハート型を作らず直線的である。
左右の殻は、前端・後端部で閉殻時でもあわず常に開いた状態である。殻端の形状は、前端側では殻頂より少し傾斜しながら直線的に前背縁がのび、角ばらず大きく丸みをもったカーブで前端部を作り緩やかなカーブの腹縁につづく。
一方後端側は、おなじく殻頂より直線的に後背縁が前背縁に比べて長くのび、丸みをもっているが前端に比べやや裁断的な後端を示しながら腹縁へつづく、なお後端部の左右の殻はかすかに外側にそりだしていてロート状に広がりをみせる。
殻表には太さは一定しないがハッキリとした成長線・輪肋があり、また挿入肋が不規則に多く入ることによって輪肋は波状に広がるようにみえる。
■ ほかの産地のパノペア類との比較
次の産地の自採標本を主に比較検討した。
1. 岡山県津山市院庄・吉野 (勝田層群 吉野層 河合1957)
2. 島根県浜田市畳が浦千畳敷 (唐鐘累層 畳が浦部層 都留1983)
3. 島根県出雲市上塩冶町菅沢 (大森層 布志名層 坂之上1999)
4. 島根県松江市乃白町中の谷 (布志名層 末広1979)
5. 兵庫県関宮町大鍋・葛畑 (北但層群村岡累層大野峠砂岩層 弘原海・松本1958)
6. 石川県金沢市大桑犀川河床 (大桑層 松浦1985)
Pl. 1 Fig.1 標本 (院庄産)
殻の保存状況はよいが、前部は消失している。合殻である。
殻表の波状の成長肋はよくみられ、殻の変形度合いは少ない。後端部の殻は裁断状で、腹縁部は閉殻しているが後端は開殻であり、左右の殻のそりはみられない。
Pl. 1 Fig.2 標本 (院庄産)
殻の保存状況はよい、後端の一部が消失している。合殻である。
圧力変形と考えられるシワが殻表にある、後端の開殻度は大きく左右の殻のそりがかすかにみられる。
Pl. 2 Fig.1 標本 (院庄産)
殻の保存状況はよいが腹縁および後端の欠損が大きい左片殻の標本後端のそりがかすかにみられる。
Pl. 1 Fig.3 標本 (吉野産)
合殻で有殻で変形を受けていない。
後端の左右の殻は後背縁よりかすかにそりをみせて広がり開殻である、腹縁部は閉殻しているが、前端も両殻はあいている。また後端はやや裁断的な形状をしている。
Pl. 2 Fig.2 標本 (畳が浦産)
畳が浦馬の背付近で採集した左殻の標本
保存状態はよく大型で長方形、殻表の特徴はよくみることができる。殻は長く後端は裁断的な形状を示さず丸みが強い。
Pl. 2 Fig.3 標本 (畳が浦産)
Fig.2と同じく馬の背付近で採集した右殻の標本
長方形であるが殻長は前記標本に比べ短い、また保存状況は悪く殻が消失している部分が多い
全体的に丸みが強く、後端はやや裁断的である。
Pl. 2 Fig.4 標本 (菅沢産)
菅沢の放水路工事現場の布志名層より採集した合殻標本
殻は小型で、幼貝と考えられる、後端は丸みが強い。
Pl. 3 Fig.1 標本 (菅沢産) (出雲市在 内田氏採集)
上記標本と同産地で大森層より採集された合殻標本
Pl.2 Fig.2 標本に酷似するが殻頂がやや中央よりである。
Pl. 3 Fig.2・3 標本 (乃白産)
乃白町中の谷の製材所跡地の布志名層の露頭より採集の合殻標本
畳が浦産と菅沢産の殻長が長いタイプとよく似ているが殻幅が殻長に対して少し大きい。
Pl. 4 Fig.1 標本 (大鍋産)
大鍋の林道工事の大谷砂岩層と考えられる残石より採集、殻は消失した左片殻の標本
殻は小型で幼貝と考える、殻頂は前端への片寄りが大きい、後端部の殻高方向への広がりは大きく水管口の殻の外部側へのそりも強い。
Pl. 4 Fig.2 標本 (大鍋産)
産地は前記標本と同場所、合殻で殻は消失している
殻は卵形で殻頂は前方へややかたよる、前端はほとんど閉殻であるが後端は左右の殻が外側へそりだし閉じられていない。
Pl. 4 Fig.3 標本 (大野峠産)
大野峠の切り割り露頭より採集、合殻で殻は消失している
殻は前後に長い方形で、殻頂はやや前方による。前後ともに閉殻していない、北但層群のものとしてはPl. 5 のFig. 2と同じく殻高が小さい標本である。
Pl. 4 Fig.4 標本 (葛畑産)
葛畑から別宮への道路の切り割り露頭(大野峠砂岩層)合殻で有殻標本
殻は卵形で、殻頂は前方へかたよる、圧力変形を受けたためか、殻表にシワ状の盛り上がりがある。前端はほぼ閉殻しているが後端の殻は後背縁から左右の殻は徐々に広がり後端では37_の広がりがあり腹縁でも閉殻していない。
Pl. 4 Fig.5 標本 (大鍋産)
合殻で一部有殻標本
左右の殻は腹縁で閉殻であるが前後は閉じていない、特に後端の広がりは大きくロート状の広がりをみせ、左右の殻が外側へ大きくそりかえっている。
Pl. 5 Fig.1 標本 (葛畑産)
合殻で有殻標本
殻表には圧力変形によるものと考えられるシワがあり、前後の殻は閉殻せず後端の開殻度合は大きい。
Pl. 5 Fig.2 標本 (葛畑産)
合殻で有殻標本
右殻の殻頂は欠損している、殻頂は前方へのかたよりは大きい殻長に比べて殻高の率は小さい
Pl. 5 Fig.3 標本 (葛畑産)
合殻で有殻標本
殻表には圧力変形によるものと考えられるシワがあり、後端の開殻度は大きく26_にもなり左右殻の外側へのそりかえりもみられる。
Pl. 5 Fig.4 標本 (葛畑産)
合殻で一部有殻標本
殻長に比べ殻幅が大きく、ふくらみが強い、また後端の開殻度も大きい。
Pl. 5 Fig.5 標本 (大桑産) (金沢市在 中根氏標本)
大桑犀川河床産、合殻であるが左右の殻はズレがある
殻は大型で後端は裁断状で、殻頂はやや前方による、前端は大きく丸みをもったカーブを示し、その頂部は前背縁側にかたよる。
学生版 日本古生物図鑑(北隆館1982)の327頁、1535図と353頁、1703図のP. japonica と似るが、後端の裁断の形が本標本では丸みが強い。
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